ボランティアは、規則にしたがって、決められたことを決められた相手とするのではないので、行動をする過程でつぎつぎと、予期しない、いろいろな人とかかわることになる。実際、ボランティアが行動を起こすとき、たいていの場合、さまざまな人に協力を要請することになる。そのプロセスで、「面倒臭いことを頼むな」という文句を言う人もいれば、結構興味を持ってのってくれる人もいれば、こちらから頼まないのに思わぬ親切をしてくれる人も出てくる。 その「結構興味をもってのってくれる人」や「思わぬ親切をしてくれる人」が、あなたに呼応してくれたというわけだ。したがって、あなたはそのタイミングを捕まえて、ひとことお礼をいうなり、気持ちを伝えるなりすることで、その人とつながりがつけられることになる。ボランティアの目指している「つながりのプロセル」における「相手」というのは、( 1 )。 個人的な体験を一つお話しよう。私はアメリカに10年以上いたが、あるとき、2 住んでいたアパートの建物が、夜中のうちに全焼した ということがあった。さいわい、けが人はでなかったのだが、私をはじめ、数十家族が文字通り、着のみ着のまま焼け出された。 その時、アパートの建物の隣のレストランに、いつのまにか、「臨時避難所」が設けられ、数人の人が、コーヒーを入れてくれたり、話しかけたりしてくれた。また、券を渡してくれて、ホテルまで車で送ってくれたりした。自分の住んでいる場所が火の手に包まれ、焼け落ちるという光景を目にするのは、不安で、( 3 )ものだ。そんなとき、一杯のコーヒーと、何気ない会話を提供してもらうことは、想像するより、大きな助けである。 そのときは、4気が 動転して いて気がつかなかったのだが、今から思うと、中というのに飛び出してきて、いろいろと世話をしてくれたあの人たちは、ボランティアに違いない。 今から、その人たちを探し出し、お礼をすることに、あまり意味はないだろう。彼らも、それを望まないであろう。そのかわり、私は、今、日本にいる外国人の相談にのるなどしているというわけだ。その人たちが、いつか、日本で、または、その人の母国で、何か、誰かの役に立つことがあれば、世界規模のネットワークがつながることになる。 (金子 『ボランティア もう一つの情報社会』岩波書店による) *注1:プロセス:過程 *注2:ネットワーク:組織