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近代科学は、人間が自然を(注1)コントロールするものと考えてきた。そして、対象を自分の脳で理解できる範囲内のものとしてとらえ、相手を完全に動かせると考えた。しかし、工業化を進められるだけ進めた結果、地球の温暖化が進み、異常気象が発生するといった事態を、最初から予想していた者はいなかったのである。近年、遺伝子(いでんし)組(く)み換(か)え•細胞融合(さいぼうゆうごう)などの技術を利用して品種(ひんしゅ)改良(かいりう)が盛んであるが、殺虫性作物(さっちゅうせいさくもつ)を食べた益虫(えきちゅう)が死んだり、除草剤耐性菜種(じょそうざいたいせいなたね)と近隣の雑草が交雑して、除草剤が効かない新種の雑草が生まれたといった報告が(あと)を絶(た)たない。ここでも予期しない事態に遭遇(そうぐう)したのである。 1これらを考えると、環境問題とは、人間が自然をすべて脳に取り込むことができ、コントロールできると考えた結果、 起こってきたとみることもできる。それと(注2)裏腹(うらはら)に、 自然のシステムはとても大きいから、汚染物質(おせんぶっしつ)を垂(た)れ流しても、 「自然に」浄化(じょうか)してくれるだろうという過大な期待もあった。人間は自然を相手にすると き、理解できる部分はコントロールし、理解を超えた部分には目をつぶってきた。一言で言うなら、相手に対する謙虚(けんきょ)な姿勢(しせい)がなかったのである。