無人島に漂着してただ一人でくらしている人間が自分の心は病んで いると考えることがあるだろうか?もちろんそう考えることも無いとは言えない。けれどもそれは、彼がかつて暮らしていた社会の基準に従って自分の状況を判断した結果であろう。生まれた時から完全に一人で育った人間には、 そうのような判断 は不可能である。こう考えてみると、心の病は、人間の対社会的なありようと密接な関係があるということになる。いやそもそもアイデンティティ(自我)というもの が対社会的なものではないだろうか。従って社会の成員となろうとしている時期、自我形成期に当たる十代の半から二十代にかけて、我々が心の病に悩むことが多いのも、当然のことと言えよう。