願 ( ねが ) いがかなったら、 両目 ( りょうめ ) が 開 ( あ ) きます 八百万 ( やおよろず ) の 神々 ( かみがみ ) を信じるといわれる日本人の暮らしには、さまざまな 縁起物 ( えんぎもの ) ( 幸福 ( こうふく ) を招くもの)が 存在 ( そんざい ) する。だるまは、 数 ( かず ) ある 縁起物 ( えんぎもの ) の中でも、日本人に 最 ( もっと ) も親しみ深いもののひとつ。モデルとなったのは、 5 世紀頃にインドで生まれ、のちに中国で 禅宗 ( ぜんしゅう ) を開いた 達磨大師 ( だるまだいし ) といわれる。 手足 ( てあし ) のない 独特 ( どくとく ) の形は、大師が 座禅 ( ざぜん ) を組んだ 姿 ( すがた ) をもとにしたとされ、赤い色は 法衣 ( ほうえ ) の色にならったといわれる。最近は 黄色 ( きいろ ) や 金色 ( きんいろ ) など、 赤以外 ( あかいがい ) の色も 多数 ( たすう ) 生産されるようになり、大きさも実にさまざま、 細部 ( さいぶ ) のデザインも 無数 ( むすう ) に種類がある。 ほかの縁起物とだるまが違うのは、使われ方にある。ただ 飾 ( かざ ) るのではなく、「 願 ( ねがい ) をかける」といって、願いごとをする時に使うのだ。通常のだるまには、最初、目が 描 ( か ) かれていない。 受験 ( じゅけん ) や 選挙 ( せんきょ ) 、 商売繁盛 ( しょうばいはんじょう ) 、 家内安全 ( かないあんぜん ) など、買った人が願いをこめながら 片目 ( かため ) を描き、それがかなった時に残りの 一方 ( いっぽう ) を描き入れ、願を完成させるのだ。 また、だるまの誕生は今から約 200 年前といわれているが、これほど長い 間 ( あいだ ) 愛 ( あい ) されてきたのは、「 起 ( お ) き 上 ( あ ) がり 子法師 ( こほうし ) 」と呼ばれる 独特 ( どくとく ) の形にも 秘密 ( ひみつ ) がある。倒れそうになってもまたまっすぐに 戻 ( もど ) るその様子が、悪いことが起きても 立 ( た ) ち 直 ( なお ) る、 不屈 ( ふくつ ) の 精神 ( せいしん ) を思い出させてくれるからだ。 全国の 80 %のシェアを 誇 ( ほこ ) る 群馬県 ( ぐんまけんたかさきし ) では、だるまだけを売る 市 ( いち ) 「だるま市」が毎年 1 月 6 日に開かれ、新年の 風物詩 ( ふうぶつし ) になっている。